サッポロホールディングス(HD)の時松浩社長が6日までに、産経新聞の取材に応じ、2026年10月のビール系飲料の税率一本化を見据え、税率が下がる狭義のビール(従来のビール)に注力する考えを示した。また、市場の要請に応えるため、収益構造の改善にも意欲を示した。
サッポロホールディングス(HD)の時松浩社長が6日までに、産経新聞の取材に応じ、2026年10月のビール系飲料の税率一本化を見据え、税率が下がる狭義のビール(従来のビール)に注力する考えを示した。また、市場の要請に応えるため、収益構造の改善にも意欲を示した。主なやり取り.は次の通り。
――昨年来、ビール「黒ラベル」が若者に支持されて好調が続いている
「各界の著名人が(俳優の妻夫木聡さんと)大人をテーマに語り合う『大人エレベーター』のCMや、東京・銀座の通年型ビアバー『サッポロ生ビール黒ラベル THE BAR』などの場で、黒ラベルの世界観を体験、体感してもらう取り組みを10年以上前から続けてきた。突然、去年から好調という話ではなく、目に触れ、手に取ってもらう体験、体感を通してリーチが広がり、全体的な底上げにつながった」
――ビール系飲料の税率一本化に向け狭義のビールの競争が激化しているが、どのような戦略で臨むか
「われわれは狭義のビールのシェアが非常に高く、追い風になる。自分たちの強みの狭義のビールに一層投資し、成長の流れに持っていく。黒ラベルだけでなく『エビス』や赤星と呼ばれる『ラガー』など多様なブランドはそれぞれ評価を得ており、これらのフォーメーションで市場にアプローチしていきたい」
――発泡酒や第3のビールの展開は
「鶴翼の陣形を張る、あれもこれもということはない。今、発泡酒や第3のビールを手にとっていただいているお客さまはしっかりキープする方針だが、より狭義のビールにフォーカスしていきたい」
――東京・恵比寿の商業施設などを保有する不動産事業の外部の資本注入に向けた進捗(しんちょく)状況は
「十数社から受けている提案の中身を精査し、年内をめどにどういう形で取り組むかを決める。黒ラベルやエビスを体験、体感してもらう場は、不動産とも関わる。ブランドの体験、体感を一緒にやっていけるような人たちとパートナーを組むことになるだろう」
――不動産事業の分離後、酒類、食品・飲料に続く第3の柱になる事業は
「酒類をめぐる体験につながるようなビジネスは一つの考え方としてはある。飲食を通じて地域の方々と連携協定を結び、特産の食材の市場を広げるコンサルティングなどにはビジネスのチャンスがある」
――海外への展開は
「北米は生産拠点を確保するということで投資し、(海外専売の)『サッポロプレミアムビール』が順調に伸びてきていて、この勢いをしっかりと継続していく。アジア太平洋、欧州も順調に推移している。まだまだ成長の余地はあるが、国ごとに流通が違うので、最適なパートナーとアライアンス(連携)を組んで取り組んでいく」
――飲料の海外展開は
「ノンアルコールは北米でも市場の成長が見えており、展開を始めている。カナダには(子会社の)『スリーマン』もあり、シェアを持っているので、(栓を開けてすぐに飲める)『RTD(レディー・トゥー・ドリンク)』はチャレンジしていきたい」
――社長に就任し、見えてきた課題は
「資本市場が要請・要求していることと、顧客に向き合う事業会社の目線は必ずしも同一ではないところがある。低収益構造といわれ、市場にリターンできていないということは、顧客に対する価値を作れていないということだ。資本市場が期待するリターンを意識した経営をしていかなければいけない」
――社長在任中に成し遂げたいことは
「2月に発表した中長期成長戦略の結果を出すことだ。低収益だったら結果が出ていないということ。収益を資本市場からの期待値に応える水準まで引き上げる道筋をつけるのが、私の仕事だと思っている」
ときまつ・ひろし 慶応大商学部卒。江崎グリコを経て、1991年、サッポロビール(現サッポロホールディングス)入社。サッポロビール取締役営業本部長、サッポロ不動産開発社長、ポッカサッポロフード&ビバレッジ社長を経て、今年3月より現職。63歳。大分県出身。
来年のビール系飲料の税率一本化は、サッポロHDが強みとする狭義のビールには追い風になる。一方で、飲酒人口は近年減少傾向にある。また、依存症には至っていないものの飲酒によって精神的、身体的に健康が損なわれる「アルコールの有害使用」には厳しい目も注がれる。時松氏は業界として有害使用には適切な対処をしなければいけないとしつつ、「いろんな意味で文化的効用もある」と強調する。「愛飲家」の一人としては、人間関係の潤滑油にもなるアルコールの効用を、もっと多くの人に理解してもらいたいと思う。(小島優)
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授